シリア反政府軍に広がるISIS支持の動き

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『ガーディアン』が行なったインタビューによれば、米国主導のシリア空爆によって、ISIS(イスラム国)の求心力が高まっているという。ちなみにインタビューの対象は、主にシリア反政府組織のメンバー、元メンバーであるため、一般的な市民の意識については情報が不十分である。ただし、当該地域で銃を持って戦っている者たちのうちでISISに対する支持が高まっているのは事実のようだ。

Mona Mahmood. “US air strikes in Syria driving anti-Assad groups to support Isis”. the Guardian. Nov 23th, 2014
 
 
自由シリア軍(Free Syrian Army、以下FSA)を離脱してISISに加入しようとしているアブ・タルハ(Abu Talha)は「私は、共に戦う事の出来る真実のジハード戦士を捜していた。そしてISISの戦士たち以上の存在を見つけることはできなかった」と語り、ダマスカス北部でFSA戦士として闘っているオマール・ワリード(Omar Waleed)は「私は、多くの人々が米政府への失望からISISに加わるのではないか、と恐れている。ソーシャルメディアなどを見れば、多くの人々や指導者たちがISISの側に立ちつつあるのが分かるだろう」と述べた。

シリアにおける反アサド闘争は長期化を余儀なくされている。アサド政権の側に立つのか、それとも反政府軍を支援するのか、国際社会が態度を決めかねている間に、多数の一般市民を巻き込みながら犠牲だけが着実に積み重なっていった。ISISに同情的になり、同調する兵士たちが増えていく背後に、米国をはじめとする国際社会に対する失望や閉塞感があることは事実だろう。

シリア北西部イドリブ(Idlib)近郊のFSAの旅団司令官アブ・ザイド(Abu Zeid)は語っている。「この地方の住民は、皆、なぜ米国連合が彼らをアサドの機関銃から救ってくれなかったのか、と疑問に思っている。その一方でISISが僅かな土地を支配しただけで彼らと闘うために動いている。私たちはこれまで自分たちの解放した地域を守るためにISISと激しく戦っていた。しかし、現在は、彼らと同盟するか、停戦している状態だ」。
 
 
最も懸念されるシナリオは、ISISの過激な行動が「米国などの異教徒からイスラムを守る戦い」として普遍的大義を得ることである。そして、そのような意識は少しずつ高まっている。シリア西部の都市ホムス(Homs)近郊のFSA戦士だったアッサム・ミュラド(Assam Murad)は語る。「私たちはホムスの地で彼ら(ISIS)と共に正面で戦う最初の者たちになるだろう。「米国が率いる」連合軍はISISに対するものではなく、イスラム全体に対するものだ」。

イドリブにあるFSA革命指令部スポークスマン、アリ・サイード(Ali Sa’eed)によると、イドリブ近郊の1000名以上のアル=ヌスラ戦線(the al-Nusra Front)の戦士たちがISISに協力するようになったという。アル=ヌスラ戦線だけでなく、今年の初めまでISISと対立していたジャイシュ・アル・ムジャヒディン軍、アルシャーム旅団、アフラールアルシャーム旅団なども、現在、同盟を模索中だと語る。

実際に交渉に携わっているアブ―・タルハ(前出)は、バシャール(アル・アサド)と世界中のすべての専制君主を打ち破る手の一つになろう、と交渉相手に呼びかけている。「私達ISISと結合する時を待ち望むアル=ヌスラ戦線の上級幹部がいる。彼らは、現在、ムスリムとジハード戦士に対する新しい米国の十字軍の背後に横たわる大きな危険をより意識しつつある」と、彼は語る。「人々は、ISISがスンニ派教徒を守ろうとしていることに気づき始めたのだ」。
 
 
彼らの視野には、アルジェリア、モロッコ、イエメンのジハード戦士たち、更にはガザやイランが入っている。ISISのこれ以上の拡大を食い止めるためにも、そこに加わろうとしている者たちの声をしっかりと分析することが必要だ。そこには明確に「ISISが反イスラムである」ことを訴え続けるイスラム指導者の声が不可欠であることが示されている。

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