中国と信教の自由

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中国のウイグル政策は、近年起こった国内でのいくつかのテロ攻撃を受けて、非常に厳しいものになっている。加えて、国外に逃亡したウイグル族のムスリムがISに合流しており、当局は、彼らが中国国内でのテロを刺激するのではないかという恐れを抱いている。当局の関心は、彼らの信仰であるイスラムに向けられ、その宗教性を減じる政策がとられている。公務員とその子供たちはモスクの礼拝への参加や、断食月の実践を禁じられ、男性のあごひげ、女性のベールも制限された。

しかし、そもそもウイグル族の過激化の根本原因は、漢族を中心とした中国政府によって、ウイグル族の権利や民族意識が抑圧されてきたところにある。そうした不満を解決しないまま、彼らのアイデンティティのよりどころであるイスラム信仰までも制限するとすれば、何が起こるだろうか。

どんな民族や宗教集団においても大多数は穏健な人々だ。それら穏健な人々までも巻き込んで過激主義が力を持つ原因には不当な抑圧に対する不満や敵意がある。以前も紹介したイギリス経済平和研究所の『Global Terrorism Index Report』によれば、テロの主要な原因として「国家による暴力」や「集団的な不満と敵意」が挙げられている。イスラムの抑圧は、彼らを更に過激主義に追いやるだけだろう。
 
 
ムスリムの経営者に酒、煙草の販売を強要

しかし、中国当局には、その理解が欠けているようだ。ワシントンポストの中国チーフであるサイモン・デニャのレポートによれば、新疆地域のアクタシュで商店主やレストランの経営者にアルコールと煙草を販売するように命令が下されたという。さらに「目立つところに飾るように」との指導まで入っている。その地域の敬虔なムスリムは喫煙や飲酒を絶っており、多くの経営者も人々に軽蔑されないよう、2012年以降それらの販売を控えていた。

Simon Denyer. “China orders Muslim shopkeepers to sell alcohol, cigarettes, to ‘weaken’ Islam”. The Washington Post. May 5, 2015

共産党当局者のアディル・スレイマンがRFA(Radio Free Asia)に語ったところでは、この命令は新疆地域において宗教を弱める作戦の一部である。イスラムへの宗教感情は安定に悪影響を及ぼしており、当局は、煙草を吸わないウイグル族を「宗教的過激主義」に固執しているものと見なす、というのである。

この通知に従わない場合は、商店の閉鎖や、商店主への法的措置(起訴や逮捕か?)が取られると警告されており、既に60余りの店舗は命令に従ったとされる。

記事中ではメルボルン大学で中国の民族政策を研究するジェームズ・リーボールドの見解が紹介された。彼は、中国の民族政策を「しばしば暗闇でじたばたしている」と表現する。宗教や民族、更にはその過激化の本質に対する理解の欠如によって、彼らは過激主義の(目に見えるが不正確な)証として、男性のあごひげ、女性のベール、飲酒を控えることなどに着目し、それらを制限する。これらは、主流のウイグル族の不満を増大させ、漢民族支配社会に対する反発を強めるだけだろう。
 
 
国際社会の取り組みは十分か

中国政府は表向き、十分な宗教の自由を保障していると主張する。先日「国際宗教の自由に関する米国委員会」が中国に対してキリスト教、仏教、ムスリムに対する「厳しく」「組織的な」「前例のない侵害」が行われていると警告を発した際も、中国政府は激しい反発を示した。ロイターが伝えている。

“China lodges protest with U.S. after religious freedom report”. REUTERS. May 4, 2015

中国の華春瑩報道官は、この種の批判に対しては常にそうであるように、そのレポートが政治的バイアスで満たされており、根拠のない批判だと主張した。そして、これもお決まりだが、米国が中国の国内情勢に干渉するために宗教問題を使うのをやめるように迫った。しかし、中国に限らず、深刻な人権侵害が認められる国に対しては非難の声を上げるのが国際社会の当然の責務である。

ただし、チベット問題も含め、中国の人権問題に関する国際的な反応は総じて鈍い。AIIB問題でも見られるように、ヨーロッパ諸国も、おしなべて経済的パートナーとしての中国にすり寄る姿勢が顕著である。しかし、情報統制や人権蹂躙が日常的に行われ、宗教をはじめとするアイデンティティや尊厳の問題に無頓着な国がリーダーシップを取ることの危険を世界はもっと認識する必要があるだろう。

感情的な反中国論ではなく、13億に上る人々の抱える現実と、その巨大国家の進路がアジアや世界に与える影響を冷静に見極めなければならない。特に東アジア地域で共存する日本にとって、中国の進路は死活的な重要性を持つ。その国が、国内においては真に国民の福祉を追求し、対外的にも節度と責任ある国になれるよう、国際社会と連携した積極的な働きかけが必要ではないか。

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